【 真樹 】 「あれは……琴美ちゃん?」
 

 会社からの帰り道、道路の隅で座り込んでいる琴美ちゃんを見つけた。

【 真樹 】 「琴美ちゃん、どうしたの!?」
 

 慌てて、座り込んでいる琴美ちゃんに駆け寄り、声をかける。

【 琴美 】 「あ、お兄さん……」
 

 青ざめた顔でよろよろと立ち上がる。

【 真樹 】 「もしかして具合悪い? 顔色よくない」
【 琴美 】 「大丈夫です。ちょっとだけ、頭がクラクラってしただけですから。家に帰って休めばすぐによくなります」
 

 そう言って微笑む琴美ちゃんだったが、その声は弱々しく、顔色もよくない。

【 真樹 】 「そんなに顔色悪いのにダメだって。ちゃんとお医者さんに看て貰った方がいい」
【 琴美 】 「そんなことないです。私、身体は丈夫な方ですから」
【 真樹 】 「ダメダメ、琴美ちゃんがいいって言っても俺はダメだから」
 

 そう言うと俺は強引に琴美ちゃんを抱きかかえあげた。

【 琴美 】 「わわ、お、お兄さんっ!?」
【 真樹 】 「琴美ちゃん、かかりつけのお医者さんとかあったら場所を教えて欲しいんだけど」
【 琴美 】 「ありますけど、あの、えっと、歩いていけますから下ろしてください」
【 真樹 】 「ダメだって。歩けないくらい具合が悪くなっていて座っていたのに放っておくことなんて出来ないよ」
【 琴美 】 「だけど、あの、こんな格好、は、恥ずかしいです」
【 真樹 】 「体調が悪いのに恥ずかしいなんて言ってられないよ。それでお医者さんはどこ?」
【 琴美 】 「この道を駅の方に向かって真っ直ぐに戻った所にあります」
【 真樹 】 「よし、じゃお医者さんのこのまま向かうから、琴美ちゃんはしっかりと俺に掴まっていて」
【 琴美 】 「えっ、あの……は、はい、わかりました」
 

 恥じらいに頬を染めながら、両手で俺のシャツをキュッと握り締める。

【 真樹 】 「じゃ、いくよ」
【 琴美 】 「は、はい。あの、お兄さん……ありがとうございます」
【 真樹 】 「お礼なんていらないよ」
 

 俺は琴美ちゃんをお姫様抱っこしたまま、足早にかかりつけの医者に向かってUターンした。