【 響 】 「あれ? 五十鈴じゃないか」
 

 昇降口から校門前に出た所で、ぽつりとひとりぼっちで立っている五十鈴の姿を見つけた。

【 響 】 「もしかして、俺を待ってたのか?」
【 響 】 「おーい、五十鈴!!」
 

 しょんぼりした顔で立っている五十鈴に、声をかけながら駆け寄っていく。

【 五十鈴 】 「あっ、お兄ちゃん!」
 

 俺の声に五十鈴はとても嬉しそうにはにかみ、俯き気味だった顔を俺の方へと向けた。

【 響 】 「もしかして、俺のこと待ってたのか?」
【 五十鈴 】 「うん。もしかしたら、まだ学校にいるかなって思ったから」
 

 俺の問いかけに、照れくさそうに答える。

【 響 】 「メール送ってくれれば良かったのに。もし、俺が先に帰ってたら、待ちぼうけくらわせちゃうところだったじゃ ないか」
【 五十鈴 】 「そうなんだけど、迷惑かなって思って……」
 

 照れくさそうに頬を赤ら、遠慮がちに答える。

【 響 】 「メールくらいで迷惑だなんて思うわけないだろ? まったく、五十鈴は遠慮しすぎなんだよ」
 

 やれやれとばかりに苦笑すると、俺は右手で五十鈴の頭を撫でてやった。

【 五十鈴 】 「やんっ、そんなにしたら髪の毛がくしゃくしゃになっちゃうよ」
 

 そう口を尖らせる五十鈴だったが、その表情は怒っているどころか嬉しそうだ。
 川内五十鈴。それが俺が頭を撫でてやってるこの子の名前だ。
 五十鈴は死んでしまった母さんの妹さんの娘で、俺の従姉妹になる。
 伊月と同じように昔から夏休みのような長期休暇の時に、東京にある実家によく遊びに来ていた。
 そんなこともあって、俺とは仲が良く、五十鈴は昔から俺のことをお兄ちゃんと呼んで慕ってくれていた。
 俺の方も妹のような存在に感じていて、年下の五十鈴の面倒を見たりして、可愛がってきた。
 人見知りは結構するけど、人懐っこい性格をしていて、俺にもすごくよく懐いてくれている。
 でも、遠慮がちな所があって、懐いてくれていても、うっとうしいと感じさせない所が五十鈴の良い所だったり する。
 暁家の人間であり、神楽邸なんてこの辺でも有名な豪邸に住んでいることから、みんなから微妙に距離を置かれ ている俺にとって、伊月と五十鈴の二人は、とても貴重な存在だ。
 そういや、鳴海学園への入学が決まってこっちに引っ越した時は、五十鈴は相当、嬉しかったのか、泣きながら 抱きつかれ、多いに困ったっけ。
 まあ、そんな経緯もあって、従姉妹である五十鈴とは、よく一緒に帰ることが多かった。

【 響 】 「そういや、今日は部活はいいのか?」
【 五十鈴 】 「今日は部会があって、お休みだから大丈夫」
【 響 】 「ああ、なるほど。んじゃ、一緒に帰るか」
【 五十鈴 】 「うん!」
 

 とても嬉しそうに頷き返す五十鈴と一緒に、俺は校門前を後にした。