式を終え、ブーケを手にした葵と教会から出ると、多くの人達が歓声をあげた。

【 美里 】 「おめでとうございます、響さん」
【 伊月 】 「いやぁ、さすが二代の種馬、さすがっすね」
【 凜 】 「まさか生駒先生と暁君が結婚するような関係だったなんて、はぁ、全然、気がつかなかったわ」
【 紳士 】 「おお、お似合いのカップルじゃないか。暁家の未来は安泰だな」
【 淑女 】 「本当、二人とも素敵ね。二人の将来が楽しみだわ」
 

 美里さんに伊月、委員長など見知った顔を始め、会ったこともない大勢の人達が
 俺と葵さんの結婚を祝福してくれている。
 親父の、というか暁家の関係者が大半を占めていることに正直、複雑な心境だが、
 祝福されること自体、とても嬉しく、幸せな気持ちになることが出来た。

【 葵 】 「ふふ、複雑そうな顔してる」
【 響 】 「えっ、そうかな?」
【 葵 】 「うん。気持ちはわかるけど、今は素直な気持ちでみんなの祝福を受け止めましょう」
【 響 】 「うん。俺も今、そう思ってたところだよ」
【 葵 】 「ふふ、それでよし。ちょっと先走った結婚式になっちゃったけど、
 わたし、今とても幸せな気持ちでいっぱいになってる」
 

 頬を赤らめながら、とびきりの笑顔を浮かべる。

【 響 】 「俺も最初はどうかな? って感じだったけど、葵さん……ああ、じゃなくて、葵を妻にしたんだって、
 今まで以上に実感できて最高に気分だ」
【 葵 】 「わたしもよ、あなた」
 

 頬を赤らめ頷くと、葵が祝福の言葉を投げかけるみんなに笑顔で手を振る。

【 伊月 】 「葵さん! ブーケブーケ! かもん、ぷり〜ず!」
 

 両手を振りながら葵が手に持ったブーケを求める伊月。
 うわ、伊月の奴、メチャクチャ目立ちやがって、こっちが恥ずかしいぞ。
 ブーケを求める伊月の周りにぞろぞろと女性陣が集まっていく。

【 葵 】 「えっと、伊月ちゃんの方に投げればいいのかしら?」
【 響 】 「いいんじゃないかな。なんか女性陣はみんな集まっちゃったし」
【 葵 】 「そうね、それじゃ……」
【 葵 】 「えい!」
 

 葵が伊月を中心に集まっている女性陣に向かってブーケを投げる。

【 伊月 】 「キタ−! そのブーケ、この伊月ちゃんが貰ったぁ!」
【 伊月 】 「どわっち!?」
 

 ドヤ顔でゲットしようとした伊月が我こそブーケをという女性陣に蹴散らされる。
 そんな中、ジャンプして一人の女性が手に取ろうとした瞬間——
 強めの風が唐突に吹き、女性陣の隅っこに遠慮がちに立っていた美里さんの手にふわりとブーケが舞い落ちた。

【 美里 】 「えっ? あっ、これって……えっ? あっ、わ、私?」
【 葵 】 「美里さん、ナイスキャッチ!」
【 美里 】 「あっ、はい。ありがとうございます」
 

 手に取ったブーケと両腕で大切に握り締めながら、美里さんが嬉しそうに微笑む。

【 葵 】 「偶然だったけど、美里さんでよかった。美里さんには感謝してもしきれないほどの恩があるから」
【 響 】 「うん、俺もそう思う。美里さんに手渡せてよかった」
【 響 】 「偶然に拭いた強い風といい、きっと次は美里さんが幸せになる番だって、神様が教えてくれたんだ」
【 葵 】 「ふふ、そうね。ねえ、あなた、みんなに幸せを与えられるような素敵な夫婦になりましょう」
【 響 】 「ああ、なろう。いや、するんだ。葵はもちろん、周りの人を一人でも多く、幸せに出来るようなそんな夫婦に」
【 葵 】 「ええ、あなたとわたし、二人……ううん、お腹の赤ちゃんの3人で、みんなに幸せのお裾分けができるくらい
 幸せになりましょう」
【 響 】 「ああ、約束するよ、葵」
【 葵 】 「あなた……」
 

 互いの気持ち、想いを改めて確かめ合うと、俺達はみんなに祝福される中、誓いのキスを交わしていった。