【 葉月 】 「な~にやってんのよ、あんたは」
   姉さんと同じ競泳用の水着を身に着けた葉月が、腕組みをした状態で仁王立ちしていた。
【 四郎 】 「うげげっ、葉月っ!?」
【 葉月 】 「うげげってなによ、それは。こ~んなにナイスなプロポーションを持った美少女を相手に失礼ね」
【 四郎 】 「なあ、葉月。今の台詞、自分で言ってて恥ずかしくないのか?」
   もの凄く、可能限り真面目な顔をして葉月に訪ねる。
【 葉月 】 「うっ……べ、別に恥ずかしくなんかないわよ! ホントのことでしょ! 見なさいよ、水泳で鍛えられた
  ナイスプロポーションを!」
【 四郎 】 「う~む、確かに悪くはないと思う。けどなぁ、姉さんに比べると、勝ってる部分がどこにもないんだよなぁ」
【 四郎 】 「あとさ、やっぱり女の子は中身が重要だと思うんだよね。うんうん……」
【 葉月 】 「あんたね、本気で殴るわよ?」
   拳をポキポキならしながら、葉月がジロリと俺を睨み付ける。
【 四郎 】 「もう殴ったあとだろ。しかも思いきり遠慮無しに後頭部をチョップしやがって、どんだけ多くの脳細胞が
 死んだと思ってんだ」
【 葉月 】 「あのくらいで死んだりしないわよ。そもそも、あんたは藤堂道場で鍛えてるんでしょ?
 あのくらい、何ともないのわかってるんだからね」
【 四郎 】 「わかるか?」
【 葉月 】 「当たり前。もう何年、幼馴染みやってると思ってんのよ」
【 四郎 】 「あはは、確かに言われてみれば、そうだな」
【 葉月 】 「それより、こんなところで何をしてるのかなぁ、四郎君は?」
【 四郎 】 「えっ、俺はその……」
   率直に言うと、姉さんの姿を見に来たんだけど、何の事情も知らない葉月にストレートに言ったら
 十中八九変態扱いされて、もう一発ぶん殴られるかも……。
【 葉月 】 「ふ~ん、あたしに言えないような目的で来たんだ、ここに」
【 四郎 】 「お、お前っ、変な勘違いするな! 俺はただ!」
【 葉月 】 「ただ……その続きは何ですか?」
【 四郎 】 「うっ……な、なんだっていいだろ。プライベートな事情なんだよ。練習の邪魔してるわけじゃ
 ないんだからいいだろ」
【 葉月 】 「関係あるわよ。あたしは女子水泳部の部長なんだから、不審者がいたら注意するのが責任者としての仕事なの」
【 四郎 】 「ちょっと待った! 俺を勝手に不審者扱いするなよ」
【 葉月 】 「じゃ、聞いてあげる。女子水泳部に何のようですか、帰宅部さん?」
【 葉月 】 「制服姿でプールサイドに突っ立ってるなんて、どう見ても変態じゃない。おまけに先輩の姿を
 じぃ~っとエッチな視線で見つめて……」
【 四郎 】 「うっ、そ、それは……」
   本当のことを言えない為、まともに言い訳の言葉すら思いつかない。
 あと、エッチな視線で見つめていたのは紛れもない事実だ。
   もし俺の脳内で妄想していたシーン……姉さんのおっぱい搾って悦んでいたなんてことを
 葉月が知ったら、悪・即・斬、で始末されてただろう。
【 葉月 】 「それは? ほら、続きを言ってみなさいよ」
【 四郎 】 「むむ……」
   マズイ、早くも追い込まれてしまった。相変わらず、やりにくいな、葉月は……。
【 葉月 】 「やっぱり何も言えないじゃない。どうせ、また舞先輩の水着姿を見に来たんでしょ?
 ホント、やらしいんだから……」
【 葉月 】 「舞先輩が全てにおいて最高なのは後輩であるあたしも認めざるえないけど、あんたは弟じゃない。
 お姉さんの水着を覗きにくるなんて、破廉恥&変態よ」
【 四郎 】 「酷い言われようだなぁ。確かに姉さんに会いに来たのは間違いないけど、別に水着姿を覗きに
 きたわけじゃないぞ。俺はただ……」
   佐和子さんに会う前に、姉さんに会って……いや、せめて姿を見ておきたかっただけだ。
 そう言いかけた所で。俺は口を噤み、その場で俯いた。
【 葉月 】 「ふぅ、なにしけた顔してるのよ。もしかして舞先輩となんかあったりしたわけ?」
  「そんなことないって。少なくとも姉さんとは何の問題ない。俺がただ一人で悩んでるだけだ」
【 葉月 】 「なるほど、悩みがあるのは認めたわけだ。今朝は誤魔化されたけど、今度は証拠をバッチリ
 おさえてあるんだから」
【 四郎 】 「あっ……」
   し、しまった! 不覚、つい口が滑ってしまった……。
【 葉月 】 「で、なにを悩んでるのよ? あたしでよかったら相談に乗ってあげてもいいわよ?」
【 四郎 】 「えっ、葉月が?」
【 葉月 】 「ちょっと、なによ、そのリアクションは!? 友達が困ってるのに放っておくほど、あたしは
 冷血人間じゃないわよ。例え、その友達がとんでもない変態でもね」
【 四郎 】 「はは、そうだな。すまん。実際、お前はいい奴だよ。口は悪くて手もすぐ出るけど、面倒見もいい、
 お人好しだ」
【 葉月 】 「な、なによ、急に……褒めても何にも出ないわよ。あ、あと、エッチなこととかもお断りだからね」
【 四郎 】 「いや、ない。それは絶対にないから安心しろ」
【 葉月 】 「むっ、そうもうキッパリといい気割られると、それはそれで腹が立つわね……」
【 四郎 】 「なんだよ、エッチなことして欲しいのか?」
【 葉月 】 「そ、そんなわけあるわけないでしょ、バカ!」