【 皐月 】「それともあたしの後ろに乗ってく? 拓ちゃんなら特別に1回120円でいいよ」
ニンマリとしながら、パンパンとスクーターのシートを叩く皐月。
【 拓己 】「悪いがどっちも遠慮しとくよ。あと言っておくけど、原付の二人乗りは違反だぞ?」
【 皐月 】「あれ、そうだっけ?」
【 拓己 】「そうだって。免許取った時に言われてんだろ」
【 皐月 】「う〜ん……あはは、忘れちゃった」
【 拓己 】「おいおい……頼むぜ」
【 皐月 】「あはは、まあ細かいことは忘れて、忘れて」
【 拓己 】「全然細かくないって。その前にうちの学校はバイクで通学するのは禁止だって忘れてるだろ?」
【 皐月 】「そうだっけ?」
【 拓己 】「そうだよ。見つかって停学になっても俺は知らないぞ?」
【 皐月 】「あはは、大丈夫だよ。これバイクじゃなくてスクーターだもん。それ以前に見つからないように気をつけてるからだいじょうブイ!」
【 拓己 】「そういう問題じゃないって。それに冬は路面が凍結するから危ないだろ。転んで大けがしたらどうすんだよ」
【 皐月 】「むふっ、もしかしてぇ、拓ちゃん、あたしのこと心配してくれてるとか?」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら俺を見つめる。
【 拓己 】「なっ、べ、別にそんなんじゃねーよ。はぁ、もういいから、先にいけよ」
【 皐月 】「お、拓ちゃんってば、もしかして照れちゃってる?」
【 拓己 】「照れてないし、心配もしてない」
【 皐月 】「あはは、そっか、ざ〜んねん。んじゃ、また後でね!」