【 唯 】「あの、お兄さん……」
【 拓己 】「うん?」
【 唯 】「わたし、本当はもっとお兄さんいっぱい甘えたい。頼りにしたいです……」
【 拓己 】「いいよ。俺、唯ちゃんに頼られるの嫌じゃない……ていうか、むしろ嬉しいくらいなんだから」
【 唯 】「えっ?」
【 拓己 】「最初はいきなり家族とか言われて、かなり戸惑ったけど、最近は妹ってのも悪くないなぁ、なんてちょっと思ってるんだ」
【 拓己 】「だから、俺はもっと頼ってもらいたいんだよ、唯ちゃんに」
【 唯 】「お兄さん……でも……」
【 拓己 】「俺なんかじゃ頼りない?」
【 唯 】「そ、そんなことないです! お兄さんはすごく頼りになります。ただ……」
【 拓己 】「ただ?」
【 唯 】「あ、あのですね。実はわたし、ここに引っ越しが決まった時ひとつだけ目標を立てたんです」
【 拓己 】「目標?」
【 唯 】「はい。自分で出来ることは出来る限り一人で頑張ろうって。わたし、ずっとお姉ちゃんやお母さんに頼ってきてばかりだったから……」
【 唯 】「だから、わたしも誰かに頼られるような、そんな人になるんだって……そう決めたんです」
【 拓己 】「そっか。そうなんだ。ならさ、こういうのはどうかな?」
【 拓己 】「唯ちゃんが困ったことがあったら遠慮なく俺に言うこと。その代わり俺が困った時は遠慮なく唯ちゃんに相談する」
【 拓己 】「どうかな? これなら俺の欲求と唯ちゃんの目標を両立出来ると思うんだけど?」
【 唯 】「あっ、はい。えっと、それじゃ、それでお願いします」
小さく頷くと、唯ちゃんはギュッと俺の背中にしがみついてきた。