店に入るなり、普段耳にしない、どこか異国情緒のある曲が聞こえ、踊り子の衣装を身に着けたレイラが踊りを客達に披露していた。
【 アイン 】 「あれがレイラの踊りなんだ」
  酒場の奥に目を向けると、質素なお立ち台の上で異国情緒溢れる踊りでたくさんいる客達を魅了していた。
【 アイン 】 「……」
 

レイラの踊りは踊りに興味のない俺でも魅入ってしまうほど艶やかで、他の客達と一緒にその場で立ち尽くし、魅入ってしまった。

レイラの踊りに見入りつつ、周囲の客を見ると、王都の民はもちろん、革命軍の警備兵と思われる連中がテーブルに座って、踊りを満喫していた。

占領地で仕事をさぼってレイラの踊りに見入ってしまう兵士達の気持ちもわからなくもない。

それほどまでにレイラの踊りは、気品と妖艶さが極めて高いレベルで両立していて、見る者を魅了していた。

そう分析した俺自身も、レイラの踊りに魅了された者の一人だった。

【 アイン 】 「……」
【 レイラ 】 「くすっ」
  呆けながらレイラの踊りに見入っていると、レイラの方が俺の存在に気がつき、クスリと微笑みながらウィンクを飛ばしてきた。
【 アイン 】 「っ!?」
  ウィンクを飛ばされた俺は我に返り、息を吸うのも忘れて見入っていたレイラから視線を反らした。
【 アイン 】 「はぁ、さすがプロだ」
 

ここに来た目的も頭の中からすっぽ抜け、踊りに見入ってしまった。

伝統的な衣装だと頭で理解出来ても、あんな薄着かつ肌の露出が大きい衣装で大きなオッパイをプルプルと弾まされたら、エロ過ぎてたまらないものがある。

多くの男性客を魅了している女性が、自分から俺に身体を差し出してもいいと言ってくれている。

そんな考えが脳裏に浮かぶと、変な優越感を抱くと共にムラムラしてしまった。

【 アイン 】 「少し店の外に出て頭を冷やそう」
  邪な考えを絶つように頭を左右に振ると、俺は一旦、紺碧屋の外へ出た。
【 アイン 】 「踊り子のダンスを見るのは初めてだったけど、なかなかグッと来るモノがあった」
  さすがはプロ。踊りの技量だけで食い扶持を稼ぐだけでなく、女王であるフィーナに王室御用達の踊り子として王宮に招かれているのもよくわかる。
【 アイン 】 「しかし、どうやってレイラに声をかけたものか」
 

革命軍の兵士もいたから、迂闊に声をかけることが出来ない。

仕事が終わるまで待ってもいいが、あまり帰りが遅くなるとフィーナが心配しそうだ。

【 アイン 】 「……仕方ない。今日は大人しく帰るか」
 

面倒だけど明日、また王都まで足を運べばいいことだ。

そう思い紺碧屋を後にしようとした刹那——

【 レイラ 】 「ちょっと待って。もしかしてあたしに用事があって来てくれたのかしら?」
  聞き覚えのある声に紺碧屋のすぐ横にある路地に目を向けると、踊り子の衣装を身に着けたままのレイラが隠れるようにして立っていた。
【 アイン 】 「ああ、ちょっと伝えておきたいことがあって来たんだけど、仕事の最中だったみたいだから引き返そうと思っていた」
【 レイラ 】 「それなら帰ることはないわ。早番だったから今の踊りで今日はおしまい。着替えて家に帰るだけよ」
【 レイラ 】 「それであたしに伝えたいことって、長い話になりそう?」
【 アイン 】

「いや、そんなたいしたことじゃない。ただ今後の事を考えると早めにレイラに伝えておいた方がいいと思って来たんだ」

【 レイラ 】 そう。少しだけ残念。昨日の今日だから、あたしの事を欲しくて、また抱きたくなって来てくれたのかも、なんて思っちゃったわ」
【 アイン 】 「いや、そうじゃない。さすがにそこまで色欲にまみれてないって」
【 アイン 】 「けど、あんたの、レイラの踊りはいろいろと凄かったよ。綺麗なのに凄く妖艶で男性客、革命軍の兵士達すら完全に魅了されていた」
【 レイラ 】 「あなたはどうだった? あたしの踊りを見て、ムラムラしてくれたかしら?」
【 アイン 】 「えっ? ああ、そうだな。それなりには……」
【 レイラ 】 「それなりにかぁ。あたしの踊り、アインにはその程度だったの?」
 

寂しそうな、悲しそうな顔でレイラがジッと俺を見つめる。

【 アイン 】 「いや、それなりというのは言葉の綾で、なんていうか、凄く良かった。気がつけば他の客と同じようにレイラのダンスに見入られていた」
【 レイラ 】 「そう。くす、そう言って貰えてよかったわ。フィーナ様でもマリエルでもなく、あたしを選んでくれる。可能性としては十分にあるのよね」
  さきほど踊っていた時と同じ、妖艶な笑みを浮かべると、レイラは俺の腕を掴んで裏路地へと引っ張り込むと、ムチュッと俺の唇に唇を重ねてきた。